『日本の家 1945年以降の建築と暮らし』展に行ってきました。

 『日本の家 1945年以降の建築と暮らし』展に行ってきました。 WEB MAGAZINE

みなさんこんにちは。先日、家づくりのおもしろい展示がやっているとの情報を聞きつけ大いなる田舎名古屋から行ってまいりました。東京国立近代美術館(MOMAT)で7月19日〜10月29日まで開催中の「日本の家 1945 年以降の建築と暮らし」展。

この展覧会は13のテーマに分かれて丹下健三、吉村順三ら現代建築の祖とも言える世代から、藤本壮介、島田陽ら21世紀になって活動の幅を広げてきた日本の建築家56組による住宅建築を、400点を超える、模型、写真、映像、手書きの図面など様々な角度から紹介しています。なんだか壮大ですね!簡単に言えば近代から現代までの住宅がほぼ網羅されている展示なのです。建築学生や建築好きだけでなく、これからの家づくりヒントがとにかく満載でした!

東京での開催はローマ、ロンドンを巡回し3会場目。会場構成は住宅を中心に数々の作品を手がけ、海外での知名度も高い建築ユニット「アトリエ・ワン」が手がけています。ちなみにアトリエ・ワンのワンは数字の1ではなく犬の鳴き声を表しているそうですワン。

それではさっそく会場の中を見てみていきましょう♩

本展では時系列や建築家ごとではなく、「プロトタイプと大量供給」「家族のあり方」「町家:まちをつくる家」など13のテーマに分けて展示がされています。誰にとっても身近である家を、時代性や社会性、立地環境や人と人とのつながりなど様々な視点から検証されています。

私が会場に入って最初に感動したのは、黒川紀章氏の中銀カプセルタワービルです。ミーハーかもしれませんが、会場に入ってすぐにタワーの写真が目に入った瞬間、この展覧会はおもしろいに違いないと勝手に確信を持ていました。(撮影禁止ゾーンだったため、写真でご紹介出来ないのが残念です。泣)

この展覧会の見所を分けると3つです。
《House Designsのおすすめポイント》
①時代に沿った家づくりの流れ
②建築家から学ぶ「家づくりのヒント」
③見て・体感できる模型や図面

 

①時代に沿った家づくりの流れ

まずは、今回の展示会がなぜ「1945年以降の建築と暮らし」なのかをご紹介します。それは、日本の住宅建築に置けるターニングポイントが、戦争の終わった「1945年」だから。それまで、都市部のほとんどは借家に住んでいましたが、一面が焦土と化し、住宅が圧倒的に不足する中、自ら土地を購入し持ち家を建てる事が政策により推進されました。1950年には、建築士法が施工され、建築家が多くの「個人住宅」を設計するようになりました。日本では、建築家が住宅を設計するというのは一般的なことですよね。しかし、実は個人住宅を建築家が設計するというのは、世界的には事例としては少ないそうです。日本の住宅建築は、こうした戦後の時代背景も大きく影響しているんですね。

戦後間も無く、借家ではなく、個人を相手に住宅を提案するという状況に建築家たちは立たされました。これまでの借家中心の建築は参考にならず、再度「日本の家」が当時の建築家たちによって一から考えられました。

丹下建三《自邸》1953年 (引用元:http://ofhouses.tumblr.com/post/145544092757/315-kenzo-tange-tange-house-seijo-tokyo)

例えば、日本の現代建築の巨匠である丹下健三の自邸。ピロティと平屋を組み合わせたシンプルな構成です。ピロティとは、2階以上の建築で、1階部分が柱のみの外構空間になっている建築のことです。ベースは日本の伝統的な社寺建築ですが、室内は畳張りに椅子での生活が基本とされているなど、和と西洋が融合された空間になっています。「日本の家」が昔ながらの日本建築と、海外の建築を組み合わせながら、独自の進化を遂げてきたことがよくわかります。

②建築家から学ぶ「家づくりのヒント」

展示スペースに入って驚いたのが、模型の多さ。実際の模型を近くで見ることができるので、間取りがイメージしやすく家づくりの参考にしやすいです。建築展というと、建築家の作品を鑑賞するというイメージになりがちですが、実は家づくりに活かせるヒントがたくさん詰まっています。ここでは、いくつかその事例をご紹介します。

■家づくりのヒント(旗竿地)

アトリエワン《ハウス&アトリエワン》2005
アトリエワン《ハウス&アトリエワン》2005年

まずは今回の会場もデザインしているアトリエワンの「ハウス&アトリエワン」。この建物は周囲を隣家に囲まれ接道部分が細長い旗竿地(はたざおち)に建てられたもの。旗竿地は、計画・建設ともに難しいため比較的割安です。そのため、このような悪条件、難しい条件の土地での家づくりを学んでおくことは、建築コストを抑えるといった面でとても重要です。また、「ハウス&アトリエワン」では冷暖房システムにも秘密が。新たに井戸を掘削し、年間通して15℃の地下水を利用した輻射熱冷暖房(ふくしゃねつれいだんぼう)を採用しています。輻射熱冷暖房とは、エアコンなどの風を利用するのではなく、パネルからの冷水・温水による輻射熱を利用し、室内を涼しくしたり、暖めたりするシステムのことです。こうした冷暖房のシステムも参考になりますよね。

■家づくりのヒント(スキップフロア)

藤本壮介《House NA》2011年

続いて、独自の空間を作り出し世界中から注目を浴びている藤本壮介氏の「House NA」。全面ガラス張りという衝撃的なデザインで、建築好きなら知らない人はいないと言っても過言ではないほど、有名な住宅です。House NAは、建物を支える柱と床以外は全てガラスで作られています。空想のデザインではなく、本当に東京の高円寺に存在し、しかも人が実際に住んでいるというのには、さらに驚きです。一見「私にはとても無理だなぁ」と思いがちですが、スキップフロアを希望している方はぜひ参考にして欲しい住宅です。スキップフロアとは、フロアの高さを半階分ずらしながら「中二階」「中三階」などを設ける建築方法です。この事例では、例えば、透明感を大切にしながらも住宅としての機能を保持した縦横の部屋のつながり方や、スキップフロアの中でどのように収納を取り入れるかなど参考になるポイントがたくさんあります。

■家づくりのヒント(光の取り入れ方)

五十嵐淳《光の短形》2007年

続いては、北海道の建築家である五十嵐淳氏設計の「光の短形」。ぱっと見「これが住宅?」という不思議な形をしています。土地が北面に接道し、他の三面に隣家が迫った、30坪ほどの小さな敷地に建てられた住宅です。室内は、高い天井が確保されたリビングダイニングを中心に配置し、その両端の南北に緩衝空間という広い吹き抜けが設けらえています。南側に設けられた緩衝空間の短形(くけい)の開口のみから光が入り込みます。このことから、採光・通風・冷気止め・動線など様々な機能を持たせた空間になっています。狭い土地、変形地での光の取り入れ方の参考になりそうです。このような構造も模型を実際に見ることができるので、イメージしやすいですね。

③見て・体感できる実物大模型

清家清《斎藤助教授の家》1952年

「斎藤助教授の家」は、テラス、廊下、居間、食堂が連続する開放的な空間の家です。床や天井をフラットにして、縁側と各部屋をひとつながりとした浮遊感のある空間が特徴的。素材や色など、モノクロ写真ではわからなかった竣工時の姿が忠実に再現されています。

清家清のアイコン的存在でもある、『移動畳』には実際に座って体感することも可能。私たちも座ってみましたが、思わず時間を忘れてしまうくらい、不思議と落ち着く空間でした。この畳は置く場所によって、空間を変化させることができます。例えば、縁側まで移動させると、外の風を感じる半アウトドアのような空間に。部屋の置くへ移動させると、今でいうベットのような空間に。このように「移動畳」など可動式家具の配置を変えることによって空間構成を変更出来るようになっています。こうしたアイディアも家づくりのアイディアとして取り入れそうですね。

その他にも会場では、住まい手のインタビュー動画など、模型や図面だけではわからない、よりリアルな情報も得ることができます。「どんな想いで設計を依頼したのか」、「住み心地はどうなのか」ど、住まい手の想いや考えはとても参考になります。これは、実際の家づくりでも同じです。ぜひたくさんの住まい手のインタビューや、アンケートなどに触れると、より良い家づくりにつながると思いますよ。

私たちは全体をさらっと見学させていただき、約1.5時間ほどでしたがとても見応えのある展示会でした。じっくり映像や各展示もご覧になられたい方は2〜3時間ほどで見れると思います。

建築好きな方はこれまでとは違った切り口で住宅建築を楽しめますし、建築好きでない方も「住宅建築」という誰にとっても身近なテーマなので、気軽に楽しめる展覧会だと思います。家づくりに活かせそうなアイディアも沢山ありましたよ。ぜひ皆さんも東京に行かれた際には、東京国立近代美術館で「日本の家」を知って、学んで、感じてみてはいかがでしょうか。

 

【展覧会情報】
展示会名:日本の家 1945年以降の建築と暮らし
会期  :2017年7月19日(水)〜10月29日(日)
会場  :東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
     東京都千代田区北の丸公園3-1
開催時間:10:00〜17:00(金・土曜は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日 :月曜日(9/18、10/9は開館)、9/19(火)、10/10(火)
観覧料 :一般1,200円、大学生800円

http://www.momat.go.jp/

 

【出品建築家一覧】
相田武文、青木淳、東孝光、アトリエ・ワン(塚本由晴+貝島桃代)、阿部勤、安藤忠雄、五十嵐淳、生物建築舎(藤野高志)、生田勉、池辺陽、石山修武、伊東豊雄、乾久美子、o+h(大西麻貴+百田有希)、大野勝彦+積水化学工業、岡啓輔、柄沢祐輔、菊竹清訓、岸和郎、隈研吾、黒川紀章、黒沢隆、金野千恵、坂倉準三、坂本一成、篠原一男、篠原聡子、島田陽、白井晟一、清家清、妹島和世、丹下健三、手塚建築研究所(手塚貴晴+手塚由比)、dot architects(家成俊勝+赤代武志)、中川エリカ、中山英之、難波和彦、西沢大良、西沢立衛、西田司、長谷川逸子、長谷川豪、広瀬鎌二、藤井博巳、藤本壮介、藤森照信、前川國男、増沢洵、宮本佳明、無印良品、毛綱毅曠、山下和正、山本理顕、吉阪隆正、吉村順三、アントニン・レーモンド